(アイキャッチ引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第22巻p. 166)
漫画『ワールドトリガー』の魅力と言えば、ジャンプ最弱の主人公である三雲修率いる玉狛第二が、ときにはその弱さを逆に利用した奇策を仕掛けて、強敵と戦う面白さがありますよね。
中でも、B級ランク戦ラウンド8(最終戦)で、個人総合2位でNo.1射手である二宮を修と遊真で倒したシーンがいちばん印象深い人が多いと思います。
その直前、修を奇襲した辻が千佳のアイビスによって撃破されたシーンも印象的です。しかし、なぜ辻は瓦と集中シールド1枚で千佳の狙撃が防げるなどと思ったのでしょうか?
この記事では、辻が千佳のアイビスを防げなかった理由について、考察しています。
目次
辻が落とされた理由
結論として、辻が落とされたのは、千佳がアイビスを持っていないと思っていたからです。
アイビスを撃つまでの時点で、千佳はメテオラ、ハウンド、シールドをバッグワームと同時展開したところを二宮隊に見られました。鉛弾狙撃も見せたので、メイントリガーの残る1枠はライトニングか鉛弾で確定です。
普段のトリガー構成から、アイビスを抜いてメテオラを入れたとしたら、狙撃手用トリガーはライトニングだけです。鉛弾ONの場合とOFFの場合に両対応するとしても、集中シールド1枚と瓦で十分だと判断したわけです。
玉狛第二の作戦
B級2位入りがかかるラウンド8で、玉狛第二は4点をとる必要がありました。
メインの作戦は、千佳による火力戦です。その間、他の隊員で千佳を守ります。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第21巻p. 10)
広範囲を一掃するため、千佳にも射手用トリガーを持たせて、中距離レンジの火力を底上げする必要がありました。
トリガー構成の変更
ただ、千佳とヒュースが合流できない可能性を考えると、これまでどおり狙撃手としての運用も必要でした。アイビスの砲撃や鉛弾狙撃に加えて、えぐい弾速が期待できる素のライトニングも二宮隊の脅威になりえます。
しかし、メインをハウンド、メテオラ、ライトニング、アイビスとすると、バッグワームと同時にシールドが展開できず、安全に合流するのが難しくなります。
メインにシールド、サブにメテオラとすると、メテオラを起動した瞬間に位置がバレるため、反撃されて自分が大ダメージを受ける可能性が高くなります。
メインにシールド、サブにアイビスとしても、位置バレで狙撃が難しくなります。
これらの問題を解決するため、千佳は下記のトリガー構成にしました。

まさかのバッグワーム2枚構成です。
シールドが1つだけなのが不安要素ですが、千佳のシールドはとても頑丈であり、また他のチームメイトが守りに専念するのなら、大きな問題はないと判断したのでしょう。
トリガー構成の検証
ラウンド8の千佳がバッグワームを2つセットしていた根拠は、全部で5つのトリガーをバッグワームと同時展開できたことです。
バッグワーム1枚だと4つまでしか同時展開できませんが、バッグワーム2枚持ちであれば6つまで可能になります。
バッグワーム+シールド
試合序盤、二宮のハウンドから逃げるシーン。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第21巻p. 142)
辻に目撃されています。
バッグワーム+メテオラ
ヒュースの周辺へ爆撃するシーン。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第21巻p. 185)
外岡に撃たれたときの大爆発とレーダーの情報によって、バッグワームとメテオラが同時展開されたことは、全部隊から確認可能です。
バッグワーム+ハウンド
外岡を釣り出したシーン。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第22巻p. 63)
キューブがとても大きいので、二宮隊からも見えていると考えられます。
バッグワーム+ライトニング
試合終盤、千佳が二宮隊を狙撃する位置についたシーン。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第22巻p. 137)
二宮隊からは見えていませんが、この後の鉛弾狙撃によって、メインにライトニングか鉛弾があることが確定します。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第22巻p. 154)
バッグワーム+アイビス
試合中盤、ヒュースが落とされた直後のシーン。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第22巻p. 51)
撃ったわけではないので、二宮隊からは確認できなかったと思います。
二宮隊からの視点
遊真をマークしていた辻は、千佳がハウンドとシールドを同時展開したことも確認しています。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第21巻p. 146)
アイビスを見ていない二宮隊からは、千佳がアイビスを外してメテオラを装備したように見えたはずです。上から3つ目のサブトリガーが不明ですが、バッグワームと同時に使わないと弱い狙撃手用トリガーが入ることは考えにくいです。

狙撃手用トリガーがライトニングしかないのであれば、集中シールド1枚と瓦で両対応できるため、辻は片手だけ開けておけば十分と判断し、弧月と瓦を持って最短経路で修へ跳びかかりました。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第22巻p. 168)
しかし実際には、千佳はアイビスを持っていたため、集中シールドと瓦は粉砕され、辻はベイルアウトしてしまったという流れです。
辻がアイビスを警戒していたのなら、方向転換ができる地上を走って、修に斬りかかっていたと思います。
千佳がハウンドを撃たなかった理由
二宮のメテオラが千佳の位置まで届いていたので、辻も千佳のメテオラやハウンドの射程内にいたことになります。
メテオラは修を巻き込む可能性があるため使えませんが、分割なしのハウンドなら使えたかもしれません。
その場合、ハウンドの軌道は直線的でないため、滞空中の敵に当てるためには、威力を落として弾速をほぼMAXにする必要があります。
弾速をMAXにしたハウンドがどれくらい曲がれるのか、威力を落としたハウンドが集中シールドを貫けるのかなど懸念材料が残るので、堅実にアイビスを使ったのだと考えられます。
玉狛第二はこの戦法を狙っていない
ただ、最初からバッグワーム2枚戦法を狙っていたのだとしたら、ヒュースをアイビスで援護しようとはしないはずです。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第21巻p. 180)
ヒュースが落とされた直後にアイビスを出したのも迂闊でした。
火力を重視して、やむを得ずバッグワーム2枚構成にした結果、意図していない勝ち筋ができたと考えるのが自然です。
実はラウンド6の修もやってた?
このバッグワーム2枚構成、よくよく見返すと、ラウンド6の修がすでにやっていた可能性があります。根拠は、次のとおりです。
まず、試合序盤で王子隊が自身を狙ってくると読んでいた修は、バッグワームで身を隠しながらスパイダーを張っています。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第18巻p. 21)
また、王子との戦闘時にレイガストとスパイダーを同時展開しているシーンがあります。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第18巻p. 94)
そして、樫尾のハウンドから千佳を守ったときには、バッグワームとレイガストを同時展開しています。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第18巻p. 79)
以上のことを実現するためには、スパイダー、レイガスト、バッグワームのいずれかを2つ装備している必要があります。つまり、下の3つのようなトリガー構成が考えられます。
スパイダー2枚構成

レイガスト2枚構成

バッグワーム2枚構成

このうちのどれかは断定できないので、バッグワーム2枚構成は、あくまで可能性があるというだけの話です。
個人的には、樫尾に対してスラスターを起動した瞬間にバッグワームが消えたことが少し気になっています。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第18巻p. 81)
試合序盤、南沢と樫尾に位置を知らせるためにアステロイドを撃ったときも、バッグワームが消えています。
(引用元: 漫画『ワールドトリガー』単行本第18巻p. 25)
スラスターとアステロイドがバッグワームと同じ側だとして、大真面目にトリガー構成を考えると、下のような不格好な感じになります。

スラスターを使うとき、単純に邪魔になるからバッグワームを解除しただけかもしれないので、何を2枚持っていたのかは永遠の謎です。
まとめ
最終戦で、千佳はバッグワームをメインとサブの両方にセットしていました。バッグワームと同時に4つまでしか他のトリガーを起動できない仕様の裏がつけたことで、辻の撃破に繋がります。
作中でまったく語られなかったのは、バッグワーム2枚戦法が地味すぎるからだと思います。初見では、修のアステロイドがハウンドに替わっていたことしか話題にならないのは当然です。
長時間バッグワームを展開することによるトリオン消費やシールド単体の耐久性を考えると、千佳、ヒュース、二宮くらいしかできない戦法だったかもしれません。
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